キング アーサーのここだけの話
ひとりぼっちのナタリー
この国に列車の運行スケジュールなんてものが本当に存在するのかわからない。
遅れてやってきた上に、さらにまた、どこともわからぬ駅で長時間停車。
元から計算すれば何時間遅れなのかわからない俺たちの乗った列車が、やっと動き出した。
俺のせいだとは思わないが、列車に戻ってきてからナタリーはずっと不機嫌だ。
不機嫌な態度をあからさまにするように、ナタリーだけ空いている隣のボックス席にわざわざ移って、ひとりずっと外を眺めてる。
「なんかあったのかな」
俺は小声でシンさんに訊ねてみた。
もちろん日本語で。
「言葉が通じんのやから、小声で話す必要ないやろ」
シンさんから返ってくる。
それもそうなのだが、この重い雰囲気の中で普通のトーンで話すのはいかがなものか。
「でも・・・」俺は言い返そうとしたが、返す言葉も思いつかない。
それほど重い雰囲気だ。
「いつも通りにしてるんが、ええんちゃうのん」
前回の話/これじゃ、釈迦に説法だ
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